特定引当預金は、通常特別な目的のために積み立てられる預金である。退職給与引当特定預金、減価償却引当特定預金、会館建設引当特定預金、XX周年記念事業引当特定預金などがある。将来の特定の支出に備えるため、その目的のためだけに積み立てられるものである。
財政調整引当預金は、その目的が抽象的であり、将来の漠然とした財政状態の変化に備えるものである。従って安易に収支の調整に使用されることがあってはならない。しかし、逆に事業に必要な支出を見積もって、それが収入よりも少ない時、無理に支出額を膨らませてつじづまをあわせることは、より無責任な態度である。
公益法人が行政の一環ではなく、より自主的、自立的な存在であるとすれば、特定の自主財源としての財政調整引当金を内部留保することをおそれてはならない。公益法人の定款、寄付行為に定められた事業目的はその社会的役割が終わるまでは継続する責任があり、どのような事態がおころうと継続できるよう準備しておくことは、各公益法人にとって必要なことである。
運転資金引当金は、一般的なものではないが、その設定を検討してもよいと思われる法人の数は多いと思われるので、ここで触れることにする。
運転資金引当金とは、その収支の構造から言って、期末の収支差額を0円にした場合、事業の執行が困難な法人について事業年度開始から2~3ヶ月分の運転資金を運転資金引当資金として積み立てるものである。例えば、社団法人の会費収入が事業年度開始後直ちに入金とならない場合、前年度末の繰越収支差額が0円であれば会費が入金されるまでの間、事業の執行が行なえなくなる。又、補助金委託費が年度開始直後に入金されない場合にも同様である。ところが、必要資金を繰越収支差額として残せればよいが、収支均衡の原則によって、繰越収支差額を予算化してはならないとの指導又は自主規制が行われることもある。
このような場合、予算の執行又は支払いの繰り延べといった手法でやりくりするのではなく、運転資金引当預金をその計算根拠を明確にした上で、期末に積立てるほうがよい。そしてその名の通り、翌年度の期首に、使用目的に応じて取崩せばよい。会計年度の期末日の午後12時は、翌年度会計年度の午前0時であるのだから。