企業会計の基本である企業会計原則と、公益法人会計基準の違いを理解するためには、営利企業と公益法人の違いを知らなければなりません。
最初に、営利企業について考えます。日本における法人営利企業には、株式会社、合名会社、合資会社と、有限会社があります。商法と有限会社法によって法人格を与えられています。個人商店のように法人格を持たない個人営利企業も存在しています。
これらの企業の本質は利益追求にあります。何故なら、利益を生まないような企業は、銀行から金を借りることも出来ませんし、株主や出資者として出資をしてくれる人を捜すことも出来ないからです。個人的な趣味や、何らかの事情で一時的に資金を得たとしても、長い目で見ると、そのような企業は資金繰りがつかず、結局消滅するしかないのです。社会の仕組みが許さないからです。社会の仕組みとはどのようなものでしょうか。
人間は、自ら作り出す財貨の全てを消費してしまうのではなく、将来のため、その一部を投資に回します。より効率的な機械や設備を作り、次の生産に使用することによって、より質の良い、より大量の財貨を作り出す豊かな生活を求めるための当然の行動です。現在の社会では、お金の流れがその仕組みを支えています。
多くの人にとっては、給料の全てを使い切るのではなく、銀行や郵便局に貯金をすることが具体的な行動となります。銀行は、集まったお金を運転資金や設備資金として、営利企業に貸付けます。営利企業はその資金を使って得た利益をもとに、銀行に利息を支払います。郵便局に集まったお金は、財政投融資の資金として利用され同じく利息を得ます。得られた利息を原資として、貯金をした個人に利息として還元されるのです。
もともと自分のお金を貯金する個々の人の意思とはまったく関係なく、どの企業に融資するかを銀行や役所が決定するので、このお金の流れを間接金融と呼びます。多くの人にとって貯金とは、不意におとずれる事態に備えるためや、老後に備えるためのものなのですが、社会全体で考えると、生産のための投資となっているわけです。生産によって得た利益の一部を、利息という形で還元することで、より多くの資金を生産のために集めるわけです。
銀行や役所は、どのような企業にお金を貸付けるかという行為を通して、社会全体の生産活動に大きな影響を与えるのですから、その責任は重大です。
日本の場合、質素な生活を尊び、無駄遣いを嫌うという傾向が強く、その結果としての高い貯蓄率に支えられた潤沢な間接金融の資金が、戦後の復興や高度成長に大きく寄与してきました。政策的に資金の流れをコントロールすることによって、より大きな効果をもたらしてきたことも、事実だと思われます。護送船団方式とよばれる金融行政や、財政投融資による直接投資が、産業界の方向性までも決定付けるような力を持っていることを、日本株式会社と呼び、日本の経済力の強さの秘密として、語られたこともありました。
しかし、行政主導のあり方が健全な市場原理をゆがめ、バブル経済をコントロールできず、バブルが崩壊する中で、今までの仕組みが、実は「一部の構成員の中で利益を分け合うためのもの」になってしまっていたということが、白日の元にさらけ出されてしまったのが現在の姿だと思われます。その点については、前号の「行政改革と公益法人」に詳しくふれていますので、ここでは割愛しますが、徹底した情報公開によって、政策や経営方針が公表され、社会との緊張関係を持続することが何よりも重要だということを指摘しておきたいと思います。