公益セクターの会計基準をめぐる情報


第4回 誤りのない会計処理のために


2.誤りやすい会計処理について

(1)入力時のメッセージの意味と対処方法(ストック式)
一取引二仕訳と論理チェック

1.「ヒューマンライズ」におけるデータチェックの方法(2)入力時点でのミスの発見方法で述べたように「ヒューマンライズ」における仕訳伝票入力時の理論チェックは、インプットミスを防ぐ効果をもっています。インプットミスによって、伝票起票時では考えられない非論理的な仕訳の組あわせが生じるため、逆に論理チェックによってインプットミスを発見することが出来る訳です。


しかし「ヒューマンライズ」における論理チェックの本来の目的は、公益法人会計基準の体系からみて、明らかに誤りである仕訳の入力を防ぐことにあります。起票時の仕訳の論理性に誤りがないかどうかをシステムにより、自動的にチェックすることにある訳です。「ヒューマンライズ」においてこのようなチェックを行なう理由は、公益法人会計が、企業会計にはない複雑な要素を持っているからです。


企業会計と比較して公益法人会計の特質をあげるとすれば企業会計にはない収支計算を行なうことにあります。貸借対照表、損益計算書という企業会計の計算書類と公益法人会計基準における貸借対照表及び正味財産増減計算書の目的はほぼ同一のものです。これに収支計算書(予算書)が、公益法人独特のものとしてつけ加わるのです。


利益追究が至上目的である企業とは異なり、公益に資することを目的とする公益法人においては収益の拡大を望のではないため、その支出についてはより慎重な姿勢が要求されます。そのため、事業計画を確実な資金の裏づけにもとずく遂行可能なものとするため、事前に収支予算書を作成します。そして、それが計画通り行なわれたかどうかを明らかにするために収支計算書を作成する訳です。


この収支計算書を会計目的にとらえると資金の増加減少原因をあらわしたものであると定義できます。資金の厳密な定義は後に述べるとして、ここでは現金預金「おかね」として考えていきます。


「おかね」が増える原因を「収入」とします。例えば会費が普通預金に振込まれた時、「おかね」の増加を左側(借方)に、その原因である「会費収入」を右側(貸方)に書きます。
  普通預金(資金)/会費収入(収入)
という仕訳になります。


逆に「おかね」が減る原因を「支出」とします。普通預金から総合振込みで給料を支払った時、「おかね」の減少を右側(貸方)に、その原因である「給料」を左側(借方)に書きます。
  給料(支出)/普通預金(資金)
という仕訳になります。


これらの仕訳をまとめたものが収支計算書となりますから、収支計算書とは、「おかね」がどのような原因で増加し、又どのような原因で減少し、期末の残高となったかを表示する計算書類であるということになります。従って「おかね」以外の増減は全く対象としていません。




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