公益セクターの会計基準をめぐる情報


第4回 誤りのない会計処理のために


2.誤りやすい会計処理について

(2)引当金と引当預金の関連と違い


仕訳例4. 自動継続の定期預金として設定した退職給与引当特定預金の満期が到来し、その利息分が普通預金に入金された。


ストック式

(1) [入力]    
普通預金(資金)(資産) 受取利息(収入)
(2) [入力]    
退職給与引当特定預金(資産) 退職給与引当特定預金(資産)

フロー式(収支入力)

(1) [入力]    
普通預金(資金) 受取利息(収入)
   
[展開]    
普通預金(資産) 受取利息(正味)
(2) [入力]    
退職給与引当特定預金(資産) 退職給与引当特定預金(資産)

通常は(1)の仕訳だけでよいが、引当特定預金の満期到来を帳簿に記載したい場合は(2)の仕訳を追加すれば良い。この場合ストック式で退職給与引当特定預金減少額、退職給与引当特定預金増加額という正味財産増減計算書科目は使用しない方が良い。なぜなら、単なる満期到来によって退職給与引当特定預金の総額が変化した訳ではないからである。


又、「ヒューマンライズ」では(2)の仕訳を入力した際「相殺又は修正の仕訳ですか」という警告のメッセージが出力されるが、OKのキーを押せば登録される。


仕訳例5. 利息を元本に組込む方式の自動継続の定期預金を記念事業引当定期預金として設定した。記念事業引当特定預金の満期日が到来し受取利息分を記念事業引当特定預金に組入れた。


好ましくない仕訳例

ストック式

[入力]    
記念事業引当特定預金(資産) 記念事業引当特定預金増加額(正味)

ストック式

[入力]    
記念事業引当特定預金(資産) 受取利息(正味)

ストック式の場合、受取利息が収支計算書に計上されないこととなる。フロー式の場合、受取利息の金額が、正味財産増減計算書のみに計上されるため、収支計算書と正味財産増減計算書の受取利息の金額が不一致となる。


入力できない仕訳例

ストック式

記念事業引当特定預金(資産) 受取利息(収入)

この仕訳は、資金の増加原因(収入)を示す受取利息と非資金資産である記念事業引当特定預金の増加という組合せであり、理論的にあり得ないものである。このような仕訳の入力を許すと収支計算書の次期繰越収支差額と貸借対照表における資金の残高とが不一致となり、公益法人会計基準の基本的な考え方から逸脱することとなる。仕訳例5については、次のような仕訳を行なうとよい。


ストック式

(1) [入力]    
仮受金(資金)(資産) 受取利息(収入)
(2) [入力]    
記念事業引当特定預金支出(支出) 仮受金(資金)(資産)
   
[展開]    
記念事業引当特定預金(資産) 記念事業引当特定預金増加額(正味)

フロー式(収支入力)

(1) [入力]    
仮受金(資金) 受取利息(収入)
   
[展開]    
仮受金(資産) 受取利息(正味)
(2) [入力]    
記念事業引当特定預金支出(支出) 仮受金(資金)
   
[展開]    
記念事業引当特定預金(資産) 仮受金(資産)

(1)(2)の仕訳とも、非資金資産である記念事業引当特定預金の受取利息とそれを記念事業引当特定預金に組入れたことを収支計算書に反映させるためのものである。仮受金については資金科目であれば別の科目例えば仮受金に変えてもよい。いずれにしても、このような特殊な仕訳になる点及び、自動継続時の受取利息について仕訳を忘れる可能性がある点などを考えると、引当特定預金は、仕訳例3又は5の形態で設定する方がよいと思われる。




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