公益セクターの会計基準をめぐる情報


第4回 誤りのない会計処理のために


2.誤りやすい会計処理について

(4)公益法人と剰余金及び剰余金処分について
現状

財団法人の寄附行為や社団法人の定款において、いまだに次のような条文が見うけられる。


例1

(剰余金)
第×条  この法人の決算に剰余金があるときは、理事会の決議を経てその全部もくは一部を基本財産に繰り入れ、もしくは積み立て、または翌年度に繰り越すものとする。

例2

(剰余金の処分)
第×条  年度末に剰余金を生じたときは、準備金として積み立てる。ただし、理事会の議決を経て、その一部又は全部を翌年度の収入に繰り入れることができる。

2  準備金は、損失の補てんにありて、又は基本財産に繰り入れる場合のほか、取り崩すことはできない。

又、計算書類の中に次のような剰余金計算書や利益処分計算書が見うけられる。


例1

利益処分計算書
平成 X年 X月 X日
(単位:円)
X,XXX,XXX
これを次のとおり処分します。
X,XXX,XXX

例2

剰余金計算書
自 平成 X年 4月 1日    至 平成 X年 3月 31日
(単位:円)
 
X,XXX,XXX
X,XXX,XXX
X,XXX,XXX
 
剰余金処分計算書
XX,XXX,XXX
XX,XXX,XXX
X,XXX,XXX
X,XXX,XXX
X,XXX,XXX
XX,XXX,XXX

例1はともかく、例2については、公益法人の計算書類として首をかしげざるを得ないものである。公益法人会計基準は前回の改定において、基本金と剰余金という概念を廃止しており、明らかな公益法人会計基準違反である。もちろん公益法人会計基準に対する批判や異なった場合も当然認められるところではあるが、「剰余金」の問題は、公益法人の本質、その存在意義にかかわる問題であるだけに、軽視することはできない。まず企業会計における「剰余金」の検討を行い、公益法人においてなぜ「剰余金処分」があり得ないかについて考えることとする。




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