公益セクターの会計基準をめぐる情報


第4回 誤りのない会計処理のために


2.誤りやすい会計処理について

(2)引当金と引当預金の関連と違い


仕訳例6. 仕訳例5の退職金を支払うため、退職給与引当特定預金を2,000,000円取り崩して普通預金へ入金した。

ストック式

普通預金(資金) 2,000,000 退職給与引当特定預金取崩収入
(収入) 2,000,000
   
退職給与引当特定預金減少額
(資産減) 2,000,000
退職給与引当特定預金(資産) 2,000,000

フロー式

普通預金(資金) 2,000,000 退職給与引当特定預金取崩収入
(収入) 2,000,000
   
普通預金(資金) 2,000,000 退職給与引当特定預金
(資産) 2,000,000

特別な仕訳. 上記仕訳例5,6について、次のような特殊な仕訳も考えられる。


ストック式

退職金 200,000 普通預金 200,000
     
退職給与引当金 2,000,000 退職給与引当特定預金 2,000,000

フロー式

退職金 200,000 普通預金 200,000
     
退職給与引当金 2,000,000 退職給与引当特定預金 2,000,000

この仕訳は、退職給与引当特定預金への積立ては、積立て時点で収支予算及び決算に計上されており退職金の支払いの都度収支計算書に計上する必要はないという考え方である。特別会計(退職基金会計)への繰入れを利用して結果的に上記の仕訳となる手法が用いられる場合もある。


しかし、退職給与引当特定預金への積立支出は特定預金とすることについての承認であり、一旦積み立てた預金の使用目的のすべてを事前に承認したものではない。つまり、個々の退職者についていくら退職金を支給するか、そのために特定預金をいくら取崩すかについては、その都度予算の執行としての決済が必要であり、収支予算、決算には当然計上されるべきである。


以上の理由により、上記の仕訳は適切なものとは言い難いのである。




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