仕訳例2. 将来の収支状況の悪化に備えるため財政調整引当特定預金を設定する。
ストック式
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財政調整引当特定預金支出(支出) | / | 普通預金(資金)(資産) |
↓ | ||
[展開] | ||
財政調整引当特定預金(資産) | / | 財政調整引当特定預金増加額(正味) |
フロー式(収支入力)
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財政調整引当特定預金支出(支出) | / | 普通預金(資金) |
↓ | ||
[展開] | ||
財政調整引当特定預金(資産) | / | 普通預金(資産) |
財政調整引当特定預金の設定理由である「将来の収支状況の悪化」は、その発生の可能性を判定することが困難であり、又、発生金額を合理的に見積もることが出来ない。従って、財政調整引当預金を引当預金として設定することは法人の任意であるが、財政調整引当金を負債の部に計上することは出来ない。つまり財政調整引当預金は内部留保性の引当預金である。
又、引当特定預金は、使途が特定されているとは言え、法人の預金であることには変わりがない。そのような預金を設定することが何故「支出」になるのかという疑問がある。
収支計算書は、資金の増減原因を表す計算書類である。特定の目的で設定された預金は、その取崩を収入として計上しない限り、事業費や管理費といった一般的支出に充当することは出来ない。特定預金であると法人が宣言した時点で一般財源としての資金の性格を失うのである。その結果資金が減少する=支出の発生となる。
仕訳例3. 退職給与引当特定預金として設定した定期預金の満期が到来し普通預金に入金されたので、同額を新しい定期預金として設定した。
A法
ストック式
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普通預金(資金)(資産) 103 | / | 仮受金(資金)(資産) 100 |
受取利息(収入) 3 | ||
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仮受金(資金)(資産) 100 | / | 普通預金(資金)(資産) 100 |
フロー式(収支入力)
[入力] | ||
普通預金(資金) 103 | / | 仮受金(資金) 100 |
受取利息(収入) 3 | ↓ | |
[展開] | ||
普通預金(資産) 103 | / | 仮受金(資産) 100 |
受取利息(正味) 3 | ||
[入力] | ||
仮受金(資金)(資産) 100 | / | 普通預金(資金)(資産) 100 |
この方法は、引当特定預金の単なる満期の到来は引当特定預金の取崩を意味せず、収支計算書に計上する必要がないという考え方に立っている。但し、普通預金には受取利息とともに入金がなされており、その金額は取引として記帳しないと銀行帳と預金通帳の取引高が不一致となるため、仮受金しとて仕訳を行なった例である。各伝票の摘要に、退職給与引当特定預金の満期到来と再設定である旨を記載しておく必要がある。
B法
ストック式
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普通預金(資金)(資産) 103 | / | 退職給与引当特定預金取崩収入 (収入) 100 |
受取利息(収入) 3 | ↓ | |
[展開] | ||
退職給与引当特定預金減少時 (正味) 100 |
/ | 退職給与引当特定預金(資産) 100 |
[入力] | ||
退職給与引当特定預金支出 (支出) 100 |
/ | 普通預金(資金)(資産) 100 | ↓ |
[展開] | ||
退職給与引当特定預金(資産) 100 | / | 退職給与引当特定預金増加額 (正味) 100 |
フロー式(収支入力)
[入力] | ||
普通預金(資金) 103 | / | 退職給与引当特定預金取崩収入 (収入) 100 |
受取利息(収入) 3 | ||
↓ | ||
[展開] | ||
普通預金(資産) 103 | / | 退職給与引当特定預金(資産) 100 |
受取利息(正味) 3 | ||
[入力] | ||
退職給与引当特定預金支出 (支出) 100 |
/ | 普通預金(資金) 100 | ↓ |
[展開] | ||
退職給与引当特定預金(資産) 103 | / | 普通預金(資金) 100 |
この方法は、満期到来時に一旦退職給与引当特定預金を取崩し再設定のための支出を行なったとするものである。特定預金の単なる満期到来毎にこのような仕訳を行なうことは、収支計算書の収入額支出額が水増しされることとなり好ましい方法とは言えない。特定引当預金の目的に沿って一般財源に組み入れる場合に限定すべきである。