公益セクターの会計基準をめぐる情報


第1回 公益法人会計基準の本質


2.企業と公益法人

(2)企業と利益
企業の方針の決定

ところで、今までの話は、三百個購入した商品が、全て売れることを前提としています。企業の判断とは別に、市場にもっと素晴らしい新商品が隠れていることもあり ます。新商品が市場に出回ったとたん、購入した商品が全く売れなくなり、過大な在庫をかかえたままで借入金返済が出来ず、その企業が倒産する場合もあります。


個別の企業は、社会の全ての情報をつかんでいるわけではありません。また持っている情報を全て公開するわけでもありません。むしろ最新の情報を独占することが、市場ではより多くの利益を生むからです。過酷な情報戦争が繰り広げられる理由です。


このような状況のもとでは、企業の方針を決めることは、一種の博打です。賭けに敗れた企業は市場から去っていくしかありません。逆に賭けに勝った企業は大きな利益を得ることが出来ます。大企業の経営者の多くに、意思決定の最後の段階で相談する占い師がいることの背景もここにあります。


規制緩和と競争原理

日本の場合、市場の情報の大きな部分を行政が独占し、産業の方向性を決めてきたという事情があります。その情報を元に、行政が公式に、非公式に示す方向性に従って活動を行うことが、企業にとっては安定した大きな利益を得られる道だったのです。個々の企業の自主的な活動は、むしろ規制され既得権益を守ることが優先されてきました。国内産業の保護という大義名分で外国企業の参入を規制し、最新技術の普及も行政のコントロールのもとに置かれてきたのです。


先進国に追いつくために有効であっ たこのような体制が、今かえって、産業発展のくびきになっていることが指摘されています。携帯電話の普及がかなり遅れた事や、高速通信回線の設置の遅れなど典型的な事例です。規制緩和と競争原理の導入の必要性が叫ばれるとされる理由です。先進国の仲間入りをした日本に、世界が要求していることでもあります。逆に言えば個々の企業の内部においても、自主性にもとづいた創造性、独創性がより重要になるということです。横ならびのなかで根まわし上手が出世するような企業は活力を失っていくしかないと思われます。


市場原理の下での企業の行動原理と、日本における問題点について簡単に触れてきましたが、次は、市場原理の危うさと、その中での公益法人の姿について考えてみます。




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