このような状況の中で作成される企業の予算は、利益目標から出発することになります。今、企業が百億円の運用財産(総資本)を持っているとします。百億円の5パーセント、五億円の利益を目標とします。内部の経費や利息以外に、配当を支払い、借入金の返済を行うとすると、それ程度の利益は必要です。次に、目標利益五億円に、支払利息一億円と、売上高には影響しない企業の固定的な経費三十億円を加えた、三十六億円が次の目標になります。
ところで、その企業の商品百万円分を販売するためには七十万円の変動的な経費がかかるとします。たとえば、商品の仕入代金が六十五万円、運送費などの付随経費が五万円かかるような場合です。1個あたりの利益率(限界利益率)が0.3ということ になります。先ほどの目標値である三十六億円をこれで割ると、百二十億円の売上目標が出てきます。
逆にいうと、利益率三十パーセントの商品を百二十億円売れば、三十六億円の粗利益が獲得出来て、固定費と支払利息三十一億円を支払っても、五億円の利益が確保できることになるのです。
このようにして企業の予算が決められます。製造業の場合は生産設備の投資が大きくなり、減価償却も考えないと、各事業年度の損益は算定できなくなりますし、原価計算の方法も複雑になりますが、予算の考え方に本質的な差は ありません。
企業の予算とは、このように、損益の観点から考えられ、資金収支の予算は、作成された損益予算から、さまざまな要素を考慮して導き出されるものであり、副次的な ものとみなされていると言って良いでしょう。