公益法人とは異なり、企業の目的は「利益」の獲得である。現在では社会的存在としての企業のもつ役割、責任は極めて大きく、単に利益を求めることだけを行動原理とすることは許されなくなっている。
「利益のためには何をしてもよいのか」という批判は社会性をもっている。しかし、企業が「利益」を計上出来なくなれば、投資家はその企業の株式へ投資することをやめ、企業は経営活動に必要な資金を市場から得ることが出来なくなる。銀行からの借入れも困難になる。なぜなら、銀行に対する借入れの返済と利息の支払いの原資は、基本的にはその企業が獲得した利益以外にはないからである。
「社会的役割、責任といっても利益が計上できてこそ」という反論の方が本音である。一人一人の経営者の意識を越えて、企業という存在そのものと、それを支える社会的仕組みが利益追求を求めてくるのである。
このような企業の目的は、当然計算書類の表示の仕方に反映される。損益計算書はその企業が当期どれ位の利益を獲得したかを直接示している。
一方、貸借対照表は借入金等他者からの資金の調達額、資本金等株主からの資金の調達額及びその企業の活動結果である利益のうち、内部保留した金額を貸方に示している。企業会計における剰余金は上記利益の内部保留額のことを指している。
資本の部 | |||||
I | 資本金 | XXX | |||
II | 資本準備金 | XXX | |||
III | 利益準備金 | XXX | |||
IV | その他の剰余金(又は欠損金) | ||||
1 | その他の資本剰余金 | ||||
保険差益積立金 | XXX | ||||
・・・・・・・・・・ | XXX | XXX | |||
2 | 任意積立金 | ||||
中間配当積立金 | XXX | ||||
・・・・・・・・・・ | XXX | XXX | |||
3 | 当期未処分利益金(又は当期未処理損失金) | XXX | |||
その他の剰余金(又は欠損金)合計 | XXX | ||||
資本合計 | XXX | ||||
負債資本合計 | XXX | ||||
ここで示されているように、剰余金は別途積立金等の形で内部保留されたものと、未処分利益として株主に対する配当金等社外に流出するものに区別される。もっとも別途積立金等を取崩して社外流出にあてる場合もあり、未処分利益を別途積立金として内部保留するする場合もあるから、この区分は相対的なものである。この未処分利益をどのように配分するかを具体的に示すものが利益金処分計算書であり、その様式は次の通りである。
利益金処分計算書 | ||||
平成 X年 X月 X日 | ||||
I | 当期未処分利益金 | XXX | ||
II | 利益金処分額 | |||
利益準備金 | XXX | |||
配当金 | XXX | |||
役員賞与金 | XXX | |||
資本金 | XXX | |||
任意積立金 | ||||
・・・・・積立金 | XXX | |||
・・・・・・・・・・ | XXX | XXX | XXX | |
III | 次期繰越利益金 | XXX | ||
つまり、企業会計においては、企業が当期及びそれ以前に獲得した利益の累積である剰余金は、名部保留するだけでなく、株主への配当、役員への賞与として企業の外部へ流出する事を前提としているのである。従って、企業における利益処分計算書は基本的な計算書類の一部として作成され、株主配当や役員賞与の具体的な金額を表示すことになる。