公益セクターの会計基準をめぐる情報


第4回 誤りのない会計処理のために


1.「ヒューマンライズ」におけるデータチェックの方法

(4)月次締切及び決算時点でのチェック方法

(2)未収金、未払金

未収金、未払金については普通、元帳の外に補助簿を作成し、相手先毎の消込を行なっているはずです。その補助簿の残高と元帳の残高を突合することにより元帳残高の正確性を検証することが出来ます。


補助簿の集計表には、残高欄だけではなく発生高と回収高(又は支払高)を記入する欄についても合計を記入すべきです。補助簿と元帳が不一致の場合、ミスが起こったのが借方なのか貸方なのかがわかれば、それを捜す範囲を限定できるからです。


補助簿を作成していない場合でも、未収金の場合には請求書の控に入金されたかどうかを記録しておき、入金記録のない請求書控えの合計額と元帳残高を突合する方法があります。


未払金の場合には、対象月の請求書より作成した未払金決算明細の合計額と元帳の残高を突合することになります。一般的には、前月末の未払金については翌月支払うことが多いので、元帳上で発生と支払を個別に消し込むことにより、残高の検証と確定を行なう方法もあります。


(3)仮払金、仮受金、預り金

これらの科目は、経過勘定科目と呼ばれるもので、最終処理がおわるまでの一時的な残高と記録しておくものです。従って預り金を除き、決算時にはその残高は0となるのが普通です。0にならない場合には元帳を出力し、個別取引毎に発生と処理(借方、貸方)の消込を行ない、残高の明細について妥当性を検証することになります。


例えば旅費の仮払について仮払金に残高がある場合、その明細を作成し仮払いのまま残すのか、精算資料を入手して旅費への振替を行なうべきかを一つ一つについて判断することになります。預り金の場合は決算でも残高があるのが普通ですから、上記の処理を行ないます。


これらの科目についてその取引が頻繁に発生し、取引内容の種類も多いいのであれば、取引内容の種類毎に科目を設定するか、未収金、未払金のように補助簿を作成することによって、消込が容易となります。


なお、「ヒューマンライズ」では、これらの管理を容易にするため債権債務管理のオプションプログラムを準備しています。


(4)有価証券

手持ちの有価証券については、決算時に種別銘柄毎に株数、口数を数えます。又、証券会社に預けているものについては、証券会社より預かり有価証券明細書を入手し、種別銘柄毎に株数、口数の残高を把握します。


有価証券については、預金とは異なり、上記の手続きで把握できるのは、株数及び口数の残高であり、金額は把握できません。従って有価証券の場合、種別銘柄毎、取引ごとに取得価格を記録しておく必要がありますから有価証券台帳を作成すべきです。


有価証券にあまり動きのない場合は備忘記録として、有価証券の売買を日付順に種別、銘柄、購入価格、売却価格、売却有価証券の簿価を記入した記録を作成し、決算毎に残高証明書を作成すればよいと思われます。


なお、同一種別、銘柄について購入、売却が複数回行なわれた時は有価証券の評価方法について、総平均的法等、の方法を採用するかを決定しておく必要があります。又、評価基準について原価法を採るか、低価法を採るかの決定も必要です。詳しくは「会計学」又は「財務諸表論」の書籍を参照してください。


(5)有形固定資産、退職給与引当金

有形固定資産の期中の増減については、取得、売却、除却、受贈会計間及び、減価償却があります。取得、売却には資金の動きを伴いますので相手勘定としての資金の残高の検証が、有形固定資産の残高の検証にもなります。


しかし、それ以外の取引については相手勘定が正味財産増減計算書科目ですので、有形固定資産の残高の検証によって、正しい残高を確定する必要が出てきます。従って、除却資産や会計間移動を行なう資産の取得価格、減価償却累計額については、前期末の減価償却明細表の数字を把握しね正確に起票することが必要となります。


又、当期の償却額については起票にあたって、減価償却明細表の当期償却額の数字を正確に転記する必要があります。その上で、期末の減価償却明細票の取得価格の合計と償却累計額の合計とを資産毎に元帳の残高と突合することによって、償却額及び残高の両方の正確性を保証する必要があります。


退職引当金についても、当期繰入又は繰戻しの数字でのみ起票しますので、その数字を慎重に取扱う必要があります。同時にその計算の根拠となつた期末在籍者の退職金の要支給額、もしくはそれを根拠に算定した期末のあるべき退職給与引当金の金額と、元帳の退職給与引当金の残高との突合を行なうことにより正確な会計記録を保証する必要があります。


減価償却額や退職給与引当金繰入額の妥当性については、入力時の論理チェックでは発見できない性格のものですので、期末の残高の検証は特に重要になります。




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