このチェックは今まで述べてきた入力時点のキーボードのタッチミスによる誤りではなく、伝票一枚全体の入力もれまたは二重入力を防ぐためのものです。手作業ではあまり発生することがないこの様なミスがキーボードによる入力作業においてなぜ発生するかについては、現在のコンピューターの構造とキーパンチャーの作業姿勢を思い浮かべる必要があります。
入力作業においてキーパンチャーは入力帳票と入力画面の両方を見なければなりません。その時入力帳票をどこに置けば良いかが問題です。書見台のような付属品の上に置くか、キーボードとディスプレイ装置(テレビ)の間に置くか、あるいは膝の上に置いて作業する場合もあるようです。いずれにしてもかなり無理な姿勢であることに違いありません。
さらに入力済みの帳票をどこに置くかということも関係します。キーパンチャーは入力終了のつど入力済みの帳票をどこに置くかということも関係します。
キーパンチャーは入力終了のつど入力済みの帳票をどこかに移さなければならない訳で、そのとき書見台のうえにしろ、キーボードとディスプレイ装置の間にしろ、膝の上にしろ、かなり不安定な入力帳票の中から入力済みの帳票一枚を取り出さなければなりません。このとき帳票二枚を誤って取り出すことはおおいに起こり得ることです。
一方でより短時間に入力することを要求されているキーパンチャーに不安定な入力帳票の中から確実に一枚ずつを取り出すよう注意力を維持せよというのは過酷な要求だと思われます。また入力済みの帳票の整理が不確実な場合には二重入力も起こり得ます。
いずれにせよこのような不安定な作業環境のなかでは伝票一枚全体の入力もれまたは二重入力についてはそれが起こり得るということを前提にチェックできることが必要です。『ヒューマンライズ』において入力取引件数・金額チェックを採用しているのは、上記の誤りについて最も簡単に発見する方法として入力前に伝票枚数を数えておき入力後に画面に表示される伝票枚数とチェックすることを考えているからです。
また入力伝票のトータル金額と画面に表示される金額とをチェックすることは、伝票一枚の金額の入力ミスをも含めてより厳格なチェックを行なうためのものです。もちろん伝票枚数や金額が不一致の場合、どの伝票について誤りがあるのかをその場で確認することは不可能ですが、プルーフリストまたは仕訳帳と入力帳票をチェックする際に、誤りがあるという前提でチェックできるということは集中力を高めミスの発見を確実に行なえるという点でキーパンチャーにとって精神衛生上も好ましいことであると思われます。