公益セクターの会計基準をめぐる情報


第4回 誤りのない会計処理のために


1.「ヒューマンライズ」におけるデータチェックの方法

(2)入力時点でのミスの発見方法
確認画面について

コンピューターシステムと一口で言っても、その適用業務範囲は広く、システムに対する要求にも様々な形態があります。列車・劇場の座敷予約、銀行の窓口業務等、コンピューターシステムにとって対応速度(レスポンスシステム)が速いことが要求されるもの、小売業や問屋における仕入計上のように、大量データを締切りまでに入力する必要があるもの様々です。


但しこれらのシステムでは、出力されたものが相手方の確認をうけるという共通した特徴をもっています。乗車券や座席券・実際の現金等が、その場で発見されるでしょうし、仕訳業務では後で請求書と突合せを行なうでしょう。


従ってこれらの業務では、いかに速く出力するかに重点がおかれています。特に仕入業務のように、一日何千枚もの納品書を入力する必要がある場合には、一枚の入力に一秒余分に掛かるか掛からないかは、一日あたり数時間の差となってあらわれ、必要なオペレーターの数にまで影響を与えることになりますから、入力業務のスピードを速めることは、システムにとって再重要課題となる訳です。


いっぽう「ヒューマンライズ」をはじめとする会計システムの場合はどうでしょうか。


この問題については、会計システムがどこで使われているかという点を考える必要があります。会計事務所における記帳代行業務の場合、一つの会計事務所で数十件から数百件のクライアントの伝票を預かって会計帳簿を作成するため、その入力業務はかなりの大量データを扱います。一枚の伝票を何秒で入力するかは、会計事務所の収益性に大きな影響を与えることになります。又、会計事務所は会計の専門家の集まりですから、もし入力ミスがあった場合でも、そのミスを発見するノウハウが蓄積されており、修正作業もスムーズに行われるでしょう。


さらに会計事務所の作業目的が、最終的には税額の計算にある場合には、経費科目の科目コードの入力ミスは、決定的な問題にならない事もあるのです。これらの条件が「入力時点でのチェックには余り神経を使わず、データの修正をより簡単に行なえるようにする」という日本における会計システムの考え方に、大きな影響を与えています。


しかし、会計事務所にとっては当然これらの考え方も、公益法人自身の会計処理にとってはマイナスに働くことのなります。事業計画とそれに基づく資金的裏付けを持った収支予算書によって、定められた、事業を遂行する公益法人にとって、経理記録とは、予算の執行として厳密な決裁制度に裏付けられたものであり、簡単にその記録が修正されることは許されるものではありません。又、公益法人では、相手方の確認を受けるのではなく、法人自身でその正確性を検証しなければならないため誤った入力を防ぐことが極めて重要となります。


公益法人の会計処理では一日に発生する伝票は数枚から多い所でも百枚程度だと考えられます。この程度の枚数の入力にとっては、速さより正確性を重視した入力業務の設計が重要となります。専門のオペレーターではなく、会計の担当者自身が入力を行なう場合が多いことも、考慮に入れることが必要です。


以上の考え方をもとに「ヒューマンライズ」の伝票入力は次のような手順で行なうよう設計されています。


コード・金額入力はテンキーを使用し、確認のためにはファンクションキーを使用する。
伝票の起票を行なう通常の手順に、なるべく近い形で入力が行われるようにする。
各手順毎の確認画面を設け、入力作業者による内容の確認を受ける。

イについては、オペレーションマニュアルを見れば判って頂ける事ですし、日常の入力作業で経験されているでしょうから、ここでは説明を省略させて頂きます。ロ・ハについては、以下の順序で設計されています。


A まず、貸方借方の勘定科目と金額を入力し、それぞれの勘定科目が存在するか、勘定科目の組み合わせは誤っていないか、借方貸方の金額の合計は一致するかを確認する。(画面2参照)
B 借方貸方のそれぞれの勘定科目について摘要を入力する。この時、勘定科目毎に登録された摘要を呼び出すことによって、Aで入力した勘定科目が誤っていないないかを再確認する。(事業費・管理費等の支出科目は入力ミスの発生が多く、論理チェックでは発見が困難なため、この段階でなるべくオペレーターが発見しやすいように、全科目統一ではなく、科目毎の摘要登録の形にしています。)事業別管理システム等のオプションプログラムに必要な情報の入力も行なう。
C 伝票入力作業の最後に全体の確認を行なう。
D 自動作成された一取引二仕訳の二仕訳目の勘定科目に、誤りがないか確認を行なう。

以上が、伝票の入力手順と確認画面の意義です。日常の入力業務で何気なく行われている確認作業の意味について、少しでも理解を深めて頂くことが出来れば、この稿の目的は達成されたことになります。




目次