公益セクターの会計基準をめぐる情報


第4回 誤りのない会計処理のために


1.「ヒューマンライズ」におけるデータチェックの方法

(1)コンピュータシステム利用時の会計処理ミス
記載ミスとパンチ(入力)ミス

「記載ミス」とは、仕訳における人間の分析起票過程で発生する様々な誤りを総称し、コンピュータへの入力作業上のミスと区別するために、私が使用するものと御理解下さい。この記載ミスには様々なものがあります。


仕訳のもととなる経済的変化事象の把握ミス。例えば、入金について事業収入の種類を間違えてしまった場合、勘定科目の間違いと摘要の間違いとしてあらわれます。
単純な仕訳ミス。例えば、租税公課として扱うべき印紙の購入を、消耗品として処理した場合、勘定科目の間違いとしてあらわれます。
単純な金額ミス。例えば、5万円の消耗品を購入して、5千円と記載してしまった場合、その仕訳自体の誤りであると同時に、普通預金又は現金等の残の間違いとしてあらわれます。
その他、仕訳上で借方、貸方を逆に記載した場合。

など様々なものがあげられます。これらのミスは、手書き、コンピュータ処理を問わず、経理処理作業の中で発生するものであり、これを防ぐためには、担当者の教育・内部統制制度の充実等による他ありません。


手書きの帳簿の場合には、上記の「記載ミス」以外に転記ミス、集計ミスが発生します。普通「記載ミス」という場合にはそれらも含むのですが、コンピュータを利用した場合には、プログラム作成上の誤りを除いて、システムを使用する側の問題点とはなり得ませんし、まさにコンピュータを利用する利点ですので説明は省略します。


一方、「パンチ(入力)ミス」はコンピュータを利用することにより新たに発生し、その防止について検討すべきミスです。その内容については、次頁で述べるとして、ここでは、作成された伝票をキーボードを使用して入力する場合に発生する操作ミスだと考えて下さい。


コンピュータシステムでは、 勘定科目や、相手先・摘要の内容を数字化(コード化)して扱うため、「パンチ(入力)ミス」は、ほとんどが数字の打ち間違いとしてあらわれます。このミスについて検討する時、問題を複雑にする要素があります。それは、「パンチ(入力)ミス」と「記載ミス」の区別が難しいことです。例えば、伝票に勘定科目名又は、相手先が記載されているのに、そのコードが記入されていない場合です。


キーパンチャー(入力者)は、その伝票は入力せず、 伝票作成者に返還すべきです。伝票を正しく起票する責任と、その伝票を間違いなく入力する責任は、本来全く異なったものであり、便宜的にパンチャーが、未記入箇所を埋めるようなことになると、いったい誰がその会計処理に責任を持つかがあいまいになってしまい、パンチャーの質に、会計処理の質が依存してしまう結果となるからです。伝票作成者と入力する人が同じであっても、一旦コンピュータの前から離れ、きちっとコードを記載してから入力を再開して下さい。


通常、公益法人の会計処理においては、伝票作成者と入力者が同じであることが多く、又、勘定科目等については、科目名とコードが入ったハンコを利用することにより「パンチ(入力)ミス」と混同される「記載ミス」の発生は少ないと思われますが、 概念・考え方として、この二つを区別しておくことは、非常に重要であると考えて下さい。


さて、「記載ミス」の責任は、その起票責任者が正しく果たすものとして、最後に 「パンチ(入力)ミス」の検討に移ります。




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