コラム


第1回 行政改革と公益法人


5.子供たちの姿

(5) 営利企業への転換

指導監督基準の今回の改正のうち、営利企業への転換については、私は、慎重にすべきだと思っています。第三セクター方式の株式会社が、巨額な赤字を抱えている事は、時々新聞をにぎわせますし、その懸念からも慎重になるべきだとは思いますが、本当の理由は別にあります。


確かに、明らかに営利企業へ転換した方が良い公益法人も存在します。しかし、民間と競合するからといって、すぐに営利法人への転換を考えるのは疑問です。4で述べたように、物質的な豊かさだけではない、生活の豊かさや人間らしさを保障するためにも、また、社会の安全を守り、公正を保障するためにも、損益ではない考え方で活動をする公益法人の存在意義は、今後ますます増大するからです。


癌の検診を行っている財団があります。効率性、採算性のみで考えれば、過疎地や離島や山間部の検診は、切り捨てられてしまいます。住民の検診率を上げる事により、癌による死亡率を下げようという公益法人の目的が、採算を度外視した検診を可能にしているのです。


(6) 内部保留の量的規制の問題点

内部留保についての量的規制は、大きな問題をはらんでいると思われます。林野庁の巨額な累積赤字が問題になっていることは、先に述べた通りですが、昔、林野庁の職員の話を人伝えに聞いた事があります。


利益を上げたら上げたで、損失を出したら出したで文句を言われるので、実際どうやって良いのかわからない。運営が非常に難しいという事でした。30パーセントという内部留保の量的規制も、同じような問題点を生み出す恐れを持っています。


公益法人といっても、その業種業態は様々であり、運営上の意思決定のサイクルも様々なはずです。一律に30パ一セントという規定は、長期的な運営を必要とする公益法人にとっては、非常に厳しい物であり、短期的な観点からしか、公益活動の中身を考えられなくしてしまう危険性があります。


特定預金のなかで、内部留保からどのような物が控除できるのか、柔軟な対応が必要です。港の埠頭を管理する公社の決算書で多額の修繕引当預金が計上されているのを見て、内部留保性のものだと思った事があります。ところが、阪神淡路大震災が実際起こってみて、各埠頭公社の修繕引当預金が取り崩されて、埠頭の修復にあてられているのをみて、そうも言えないのだと、思うようになりました。



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