コラム


第3回 インターネットの光と影


3.インターネットと西部劇

(1) インターネットは西部劇の世界

パソコン通信とインターネットの違いには、閉じられた世界と開かれた世界、管理された世界と管理者がいない世界などがあります。


インターネットには、国境がありません。全世界が結び付けられた広大な仮想空間(サイバースペース)は、アメリカ大陸の西部未開拓荒野を思い出させます。ただこの荒野には、すでにハイウェイ(デジタル回線)が通っていて、人々は世界中どこへでも瞬時のうちにいくことができます。金鉱(ビジネスチャンス)を捜しに群がる人々も、西部開拓時代のような野宿の経験は必要ありません。ポルノ写真やテレクラまがいのホームページは、居酒屋や売春宿を思い起こさせ、次はきっとギャンブルのための店をはじめる人が出てくるでしょうが、それとて、実際の店は、自分の属する街(コンピュータ)の中に作ればいいのです。


この荒野の中では、移動のための時間は考える必要がありません。店を作るためのコストが極めて安いので、本格的な商店街が出来上がるのも、そう遠い将来のことではないでしょう。仮想空間上の店とは言え、そこでの買い物(サイバーショッピング)は、写真で見て、音声で説明を受け、三次元(スリーディーオー)のビデオで追い討ちをかけられるのですから、実際の商店での買い物より購買意欲をそそられるのかもしれません。自分の写真を送れば、そこに様々なパターンの洋服を着せて見せてくれるなどという芸当は実際の店より優れています。しかし、注文をしたあと実際に送られてくる商品がもし粗悪品であれば、近代的なコンピュータを使ってはいても、やはり、まだまだ、いかがわしい商人が横行する西部劇の世界だと思って下さい。


販売するほうから見ても、客の信用調査は大変です。世界中どこから注文がくるかわからないのですから、取り立てなどが現実には不可能な場合も多くなりそうです。債券取り立て屋はインターネット上では、どのような姿で現れてくるのでしょうか。今のところ、クレジットカードという現実世界の決済手段が利用されていますが、やがては仮想空間上での決済手段としての貨幣(サイバーキャッシング)が使われるようになるでしょう。


仮想空間上の販売で得た貨幣で、仮想空間上の商品を購入することが可能になります。この貨幣の開発に積極的に取り組んでいる銀行が、西部開拓時代に積極的に店舗展開を行った銀行であることもおもしろいと思います。この貨幣が本格的に流通するようになると、為替相場や輸出入という、国境を前提とした仕組みは、どの様に変化するのか、大変興味があります。



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